きょうを書いとこ日記

きのうとほんの少し違うきょう。だけど遠いあの日とはだいぶ違う。何から書こうか。ええと、そうだな、とりあえず、

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小さな来訪者のクレヨン

昨日、会社の受付ロビーに、小さな来訪者がやってきた。

ロビーにある3つの会議テーブルのうちのひとつを
ひとりで占領してテーブルの上で何かを広げている。
見たところ3歳くらいだろうか。
男の子だった。

社員はトイレに立つたびに、受付の横を通り過ぎるので、
この小さな来訪者の存在に気づく。

私もトイレ帰りに彼に気づいた。
近くに寄ってみると、彼のつぶらな瞳と目があった。
彼は口を少しあけたまま、呆然と私を見つめた。
こちらは思わず微笑むと、相手はまばたきをひとつした。

何をしているのかな、と覗き込む。
A2サイズくらいの彼にしては大きいスケッチブックを広げている。
豪快に鮮やかなクレヨンを使って何かを描きなぐっている。
何かはよくわからない。
テーブルの上を見ると、色とりどりのクレヨンが散乱している。

彼は、スケッチブックの前のページをめくって、まためくって、
そこに書き溜めた作品をまためくって、
見ているのか見てないのか、まためくって、
何枚目かをめくった時に、思いついたようにクレヨンを手にとる。
その絵の中に潜り込むように、ぐいぐいと描き始めた。
その真剣な眼差しに、何故か少し嫉妬を覚えた。

私は席に戻って、PCに向かい、企画書の続きを書き始め、
ふと、自分はあの子のような、何と言うか、
まっすぐに相手にぶつかってゆくような姿勢で、
この企画書を書いているだろうか?
自問するまでもない。もちろん書いていない。



やがて社内では、この子の噂話が広まってゆく。


「受付で絵を描いている子がいるんだけど」
「絵を描いている?」
「一心不乱に」
「何かのプレゼンテーションじゃないか?」
「3歳くらいだよ」
「ぷっ」

「受付に自分が描いた絵を持ってきている子がいるんだけど」
「採用面接じゃないの?」
「だって若いよ」
「デザイナーだって青田買いするだろ」
「あり得ない」
「なんで」
「3歳くらいだよ」
「ぷっ」

「あの子はいったい誰だ?」
「社員の誰かの子でしょ」
「じゃあ、ママの仕事終わりを受付で待っているんだな」
「たぶんね。さっき近づいて、名前は何と言うの?って聞いてみたの」
「うん、そしたら?」
「ゆうき、とか言ったような気がする」
「ゆうき君か。なるほど」
「何が、なるほど、なの」
「いや。“それじゃどこの誰かわかんないだろ”って突っ込んで欲しい?」
「そう。でね、ママの名前はなに?って聞いたの」
「なるほど」
「さとみ  だって」
「さとみ…」
「言っとくけど、里見浩太朗の里見ではないと思うの」
「だろうな。この場合、苗字でなく、名前だ。フフ」
「何、笑ってるのよ」
「クレヨンしんちゃんもママのことを、みさえって呼んでいたなと思って」
「そんなことより、わたし、社員名簿で調べてみようかな、ちょっとした母探し気分」
「おもしろそうだね(お前はヒマなのか)」

数分後。

「どうだった?」
「それがね、ウチにはね、さとみって言う名前の社員が5人いてね。○○部の○○聡美と○○理美、○○部の○○聖美、○○部の○○○里実、そして、○○課の○○理美」
「ほう、なんだか容疑者みたいな並べ方だね。で?その5人の中で彼に似ているのは一体誰なんだい?」
「それがですね、警部補。5人の中の誰にも似ていないのですよ」
「おい」

みたいな会話があったとか、なかったとか…。

3歳の少年は1時間後には、スケッチブックを畳んで立ちあがり、
リュックに詰め込んで、受付ロビーを去って行ったということである。
また新たなアトリエを探して。

会議テーブルの端、黄色いクレヨンのこすり跡。

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  1. 2006/09/22(金) 14:16:00|
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